MSAパートナーズの社長クリス・ビックリーによるブログです。ぜひご一読ください。ご意見・ご感想もお待ちしております。


ムースコール

 3月18日、「手の届くヘルスケアおよび教育の調整法案(Health Care and Education Affordability Reconciliation Act of 2010)」として知られる調整法案の全文が発表された。
 同調整法案は、上院が2009年12月24日に承認したヘルスケア改革法案、「患者保護と手の届くケア法案(The Patient Protection and Affordable Care Act)」に、下院民主党議員が望む様々な変更点が盛り込まれた内容となっている。また、ヘルスケアに関係が全く無い、政府による学生ローンについての条項も含まれているため、法案名に教育が含まれたものとなっている。
 調整法案のヘルスケア条項は、基本的に先月発表されたバラク・オバマ大統領案に沿ったものとなっており、保険エクスチェンジで健康保険を購入する低所得者向けに保険料をより安価なものにすること、従業員に保険を提供しない雇用規模の大きい雇用主に対するペナルティーを引き上げること、そして健康保険に加入しないことを選択した低所得者に対するペナルティーを引き下げる一方で、健康保険に加入しない高額所得者にはより高額なペナルティを課すことなどが含まれている。
製薬企業にとって上院法案からの最大の修正は、業界に課せられる新たなフィーの額が引き上げられたことだろう。
 調整法案による修正によって、新たなフィー課金の施行は2011年まで延期される。初年度となる2011年は、25億ドルの課金でスタートし、その後2012年から2016年は毎年30億ドルに引き上げられ、2017年は35億ドル、2018年は42億ドル、2019年以降は28億ドルに引き下げられる。
 調整法案は、パートD処方箋医薬品給付プランにおける、いわゆる「ドーナツ・ホール」を徐々に撤廃する。上院法案にあった、ドーナツ・ホールにおける医薬品販売に対して製薬企業に50%の割引を要請する条項は、調整法案でも維持されたが、施行は2011年1月まで延期された。
 オバマ大統領案は、ジェネリック薬販売の制限あるいは販売開始の延期に合意する見返りとして、ジェネリック薬企業がブランド薬会社から何らかの対価を得る、ブランド薬とジェネリック薬会社の和解合意を禁止する条項を含んでいたが、調整法案には含まれていない。その理由は、単に手続き上のことであるかもしれない。調整法案は原則として予算関連の案件のみに限られており、予算に関連のない条項は異議申し立てをされる可能性がある。後に上院において遅れをもたらす可能性を残すよりは、調整法案から和解禁止を除外することを選択したと推測される。

より大きな予算赤字削減

3月18日にはまた、連邦議会予算事務局(CBO)が、患者保護と手の届くケア法案と同調整法案が及ぼす予算への総合的インパクトの見積もりを発表した。CBOによると、両法案が合体される場合、2010年から2019年にかけて1,380億ドルの連邦赤字削減が見込まれるという。調整法案による増分削減のみでも、同じ期間に200億ドルが見込まれている。CBOはまた、両法案を合わせて立法化された場合には、2019年以降も赤字削減が継続してもたらされると見込んでいる。

リベラル派と保守派の取り込み

 下院の法案投票は、3月21日の日曜日に行われる見込みである。ナンシー・ペロシ下院議長は下院議員に投票までに法案を吟味する時間として72時間を約束している。法案が木曜日である3月18日に発表されたため、最も早い投票は日曜日ということになる。下院は実際のところ、調整法案のみについて投票する。下院民主党リーダー陣は、調整法案が下院を通過した場合、患者保護と手の届くケア法案も通過したとみなされるように調整を行った。
 下院は法案を通過させるために、216票を必要とする。これまでペロシ議長が必要な票を集めることが出来るか懸念の声もあったが、機運は高まっているようであり、日曜日までにペロシ議長が必要な票を集めることは可能なように見受けられる。オバマ大統領は、ためらいを見せている下院民主党議員の説得を押し進めるため、予定されていたインドネシアおよびオーストラリア訪問を中止した。今週初め大統領は、昨年11月にヘルスケア改革に反対票を投じたオハイオ州選出、リベラル派のデニス・クシニッチ民主党議員の支持獲得に成功した。「ブルー・ドッグ」連合と呼ばれる民主党保守系議員も、全般的に改革法案には反対の立場を取ってきたが、今週後半には法案支持を表明するメンバーも現れた。3月18日にCBOが発表した赤字削減の試算も、財政的に保守的な立場を取る議員から支持を取り付ける助けとなっている。
 もし法案が日曜日に下院を通過した場合、あとは調整法案の決議投票を行う上院次第ということになる。上院の調整法案通過に必要な票は51票のみで、それからオバマ大統領が立法化のための署名することになる。山あり谷ありの道のりを経て、ヘルスケア法案はいよいよ通過への道を歩んでいるように見受けられる。


 

ヘルスケア・サミット: (左から)ハリー・リード上院多数党院内総務、ナンシー・ペロシ下院議長、ジョー・バイデン副大統領、バラク・オバマ大統領、キャスリーン・セベリウス保険福祉省長官、ミッチ・マコーネル上院共和党院内総務

 バラク・オバマ大統領は2月25日、連邦議会の両党主要メンバーとともに、ヘルスケア改革に関する両党の相違の橋渡しを名目としたテレビ中継された会議に1日を費やした。意外でもないだろうが、共和党議員は歩み寄りに全く興味を示さなかった。しかしながらこのイベントの真の目的は、調整措置(reconciliation)によって共和党による議事妨害(filibuster)を上院で回避することにより、民主党議員に法案の立法化を推し進めるための勢いを与えることにあった。

オバマの計画

 この日の会議にあたり、オバマ大統領はヘルスケア改革のための自らの提案を発表することによって今週をスタートした。基本的に大統領案は、下院版と上院版のヘルスケア改革法案の相違点を、下院民主党議員がおおむね受け入れられるような形にするために上院法案を調整することにより克服する試みと言える。
 例として、上院法案と比較して、大統領案は保険受給者に対する補助、とりわけ保険エクスチェンジが創設されればそこから健康保険を購入する低所得の保険受給者に対する補助を、引き上げることになる。下院と上院の法案は共に、保険加入が経済的に不可能な場合を除き、たとえ経済的に保険に加入可能であっても保険に加入しないことを選択した個人に対し、罰金を課すとしている。大統領案は低所得者層に課すペナルティを低減する一方で、高額所得者へのペナルティは引き上げている。上院法案と同様に、大統領案は雇用主に対して従業員への保険提供を義務化していない。しかし、従業員が保険エクスチェンジにおいて援助を受けた場合は、保険費用の一部負担を要求している。しかしながら下院と上院の両法案に比較して、大統領案は雇用主が支払う額を低く設定している。
 大統領案はまた、メディケア受給者に対するパートD処方箋薬給付における「ドーナツ・ホール」を徐々に消滅させ、2020年にはドーナツ・ホールに達した後の受給者負担は25%のみになるように設定している。
 大統領案の中でも、ブランド薬企業とジェネリック薬企業が、ジェネリック薬の上市を制限あるいは遅らせることに合意する見返りとして、ジェネリック薬企業が何らかの対価を受け取る和解合意を禁止する条項は、ある意味で論議を呼ぶものと言えるだろう。連邦取引委員会(FTC)は長きに渡りそのような支払いによってジェネリック薬の発売を遅らせる合意(“Pay-for-Delay” settlements)の制限を求めてきたが、裁判所は一貫してそのような訴えを覆してきた。大統領案は、これを違法にする。
 下院および上院の法案のように、大統領案はメディケア・アドバンテージ・プランに対する過剰支払いを低減させるが、低減額は上院法案よりもより大きいものとなっている。上院法案と同様に、大統領案は高額保険料を課す健康保険に対して消費税を課すが、年間保険料が一世帯あたり2万7,500ドルに満たない保険はこのような消費税が免除される。この額は、上院法案の2万3,000ドルから引き上げられたものであり、また課税の施行は2018年まで延期している。
 上院法案は、製薬業界に対して向こう10年間に230億ドルのフィーを課している。大統領案はこのフィーを向こう10年間に330億ドルに引き上げている。しかし、フィーの徴収は1年遅れの2011年からとしている。上院法案はまた健康保険業界に向こう10年間に670億ドルを課している。大統領案はこのフィーの徴収開始を2014年まで遅らせている。大統領案はまた、医療機器業界に課す向こう10年間に200億ドルを、フィーではなく消費税の形に変更し、2013年から開始するとしている。
 加えて、大統領案は、メディケイドプログラム拡大に伴って州政府が対応することになるコスト上昇の一部を補填するために、連邦による追加の支払いを提供することになる。

行く手に広がる道のり

 これらの変更を以ってしても、オバマ政権が連邦議会において、立法化を進めるのに十分な民主党票獲得に成功するかどうかは定かでない。政権は、下院が上院法案を、上院法案に大統領が提案する変更を反映した調整法案とともに承認し、上院において調整法案承認のために民主党票を51票獲得することに期待しているように見受けられる。依然として、保険エクスチェンジにおける中絶費用の扱いなど、多くの困難な挑戦は残されたままであるものの、オバマ政権は抜本的なヘルスケア改革法案を推し進めるための勢いを蘇らせるため最善を尽くしているといえるだろう。


転落の後に

昨日のマサチューセッツ州特別選挙でScott Brown氏が選出されたことにより、共和党は上院で41議席を獲得、ヘルスケア改革法案を始め、共和党が反対するあらゆる法案を阻止することが可能となった。

昨日の記事で私は、「可能性は少ないとは思われるものの、ヘルスケア改革全体が崩壊する可能性も、依然として否定できない」と書いた。しかし今日になり、崩壊の可能性はより高まった。私の見込みでは、Brown氏が勝利した場合、下院は上院版のヘルスケア改革法案について、すぐさま投票を行うものと考えていた。しかし今日の報道から察するに、下院は直ちに上院案の投票を行うつもりはないようだ。多くの下院民主党員が上院案の条項の一部に反対していること、一部の下院民主党員が、ヘルスケア法案を推し進めることによってもたらされる政治的な結末に恐れをなしているようであることなども理由と考えられる。

だからといって、他にどんな選択肢があるというのだろうか。再びゼロから始めて、少なくとも一部の上院共和党員の支持を得るであろう、もっとずっと制限的な内容の改革案を通過させようという案もあるようだ。「公的保険オプション」を切り捨ててさえ、民主党は上院で共和党の支持を全く得ることができなかったことから考えると、この代替案がどれだけ現実的なものなのかは不明だ。

少なくとも一部の下院民主党員は、ヘルスケア改革から手を引くことをいとわないようだ。オバマ大統領とナンシー・ペロシ下院議長がこうした議員を法案通過へと追い立てることができない限り、この機会は、またしても滑り落ちることになるだろう。

 


連邦議会のヘルスケア法案の未来は、本日結果が出されるテッド・ケネディ元上院議員死去による空席を埋めるためのマサチューセッツ州特別選挙に委ねられるという予想外の展開を見せている。この選挙では、民主党の州法務長官であるMartha Coakley氏と共和党の州上院議員Scott Brown氏が議席を争っている。

マサチューセッツ州は通常、民主党の州として数えることが出来る州とみなされているが、多くの調査によると、Brown氏は接戦といわれる本選挙で頭一つ出ているという。その理由の一つに、ヘルスケア改革への支持が失墜していることにある。もしBrown氏が勝利を収めた場合、共和党は上院の40議席を占めることになり、ヘルスケア法案可決をフィルバスターで阻止することが可能になる。Brown氏は、法案阻止を意図していると発言している。言うまでも無く、この可能性は民主党をパニック・モードへと追い込んだ。オバマ大統領はこの週末、Coakley氏のキャンペーンのためにマサチューセッツ州を訪れた。しかしながら大統領はCoakley氏の勝利がヘルスケア法案に如何に重要であるかを強調する代わりに、銀行に対する課税の新たなプロポーザルのために上院でのサポートが必要であることに集中した。これは、ホワイトハウスが、たとえマサチューセッツ州であっても、ヘルスケア改革は魅力的な課題ではないことに気づいたという明らかな兆候といえる。

もしBrown氏が勝利を収めた場合、民主党は上院を通過した改革法案に対して投票するよう、下院を促すことになると思われる。そうすることによって、上院が修正法案の可決投票をする必要を忌避することが出来る。しかし下院民主党議員が上院法案の幾つかの条項に反対しており、下院法案も何とか可決したという状況を考えると、上院版の法案を下院で可決することは容易ではないかもしれない。可能性は少ないとは思われるものの、ヘルスケア改革全体が崩壊する可能性も、依然として否定できない。


除雪して前進

先週末は、記録的な降雪により2フィート近くもの雪がワシントンDCを包み込み、除雪車が徹夜で作業にあたっていたが、上院議員も、日曜深夜から月曜未明まで議論を続け、本日未明(12月21日)の午前1時過ぎ、上院ヘルスケア法案のフィルバスター回避に必要となる、数ある手続き的投票の最初となる投票を通過させた。党路線に関する今回の60対40の投票は、現在のところクリスマス・イヴに見込まれている上院での法案可決投票のお膳立てとなった。

週末、連邦議会予算事務局(CBO)も、修正上院法案分析を発表した。CBOによると、同法案は以下のような状況をもたらすと見込んでいる。

  • 施行後10年間の2019年までに、法案は連邦財政赤字を1,320億ドル削除する。
  • 保険に加入していない合法的米国滞在者数を、2019年までに3,100万人減少させ、保険未加入のまま取り残される非高齢者は2,300万人となる(そのうち約三分の一は、非合法的移民)。
  • 米国人の殆どは、今後も雇用主を通じて保険を得る。しかし2,600万人は、年収が連邦貧困レベル(Federal Poverty Level、FPL)の133%から400%の個人あるいは家族に与えられる援助を得て、新たに設立される保険エクスチェンジを通じて保険に加入することになる。FPL133%未満の個人にはメディケイド加入資格が生じ、結果としてメディケイドおよび州児童健康保険プログラムSCHIPによって保険を得る層が、2019年までに5,000万人に増加する(改革が施行されない場合は、3,500万人)。
  • 独立支払い諮問機関(Independent Payment Advisory Board)が設立され、メディケア支出増加の制限に対して責任を負うとともに、同機関の推奨事項は議会が阻止しない限り、自動的に施行されることになる。
  • 長期ケア保険のために任意的連邦プログラムを設立する。 

CBOでは、2019年以降も、法案の条項は連邦赤字を引き続きわずかながら低減させると予測しており、可能性としてGDPの0.25%から0.5%の削減を見込んでいる。2010年メディケア・パートBにおける医療提供者へのわずかながらの支払い増額を認めていた、もともとの法案の文言とは対照的に、修正法案はこの増額を削除しており、医療提供者への支払いは、持続可能成長率(Sustainable Growth Rate、SGR)に従い(覆される可能性が高いものの、2010年にSGR順守が覆されない限り)、21%削減されることになる。修正法案におけるその他の変更点としては、医療機器および保険業界に課せられる年間フィーが削減されている。しかしながら、製薬業界に課せられるフィーの削減は、言及されていない。

もし上院法案が見込み通りクリスマス・イヴに通過すれば、次なるステップは、上院と下院の法案を調整した後、各院で最終承認を行い、来月の一般教書演説までに大統領署名を得て同法案を立法化させることである。


<< 最初 < 1 2 3 4 5 6 > 最後 >>

Copyright © 2011 MSA Partners, LLC All rights reserved