これは、オバマ 大統領が保険福祉省(HHS)長官とホワイトハウスのヘルス改革オフィス(White House Office of Health Reform)ディレクターの両ポストに当初指名していたトム・ダシュル前上院院内総務が、連邦健康理事会(Federal Health Board)の創設を支持していたことを思い起こさせる。連邦健康理事会は、連邦準備基金(Federal Reserve Board)をモデルとした、ヘルスケア政策に関する意思決定を行う権限を持った独立機関として構想されていた。ホワイトハウスのラーム・エマニュエル主 席補佐官の兄で、現在、行政管理予算局(OMB)のピーター・オーザック局長のヘルスケア・アドバイザーを務める国立衛生研究所(NIH)のエゼキエル・ エマニュエル博士もまた、連邦健康理事会の創設を支援していた一人だ。
オバマ大統領は保険未加入者の健康保険加入拡大に関連するより多くの財政支出は、他の部分での支出削減と場合によっては高所得者への付加税などから得られる収入によって賄われるようになるとし、同政権のヘルスケア改革が予算中立的になると公約した。 も ちろん、オバマ政権は、質が高く費用効率の高い医療ケアを提供するためのインセンティブを作る保険提供システムの改革も導入したい考えだ。プライマリケア 医が様々な設定において医療ケアを調整することで支払いを受けるメディケア受給者に向けた「メディカル・ホーム」の構築、支払いを一括にすることで救急処 置後の調整を行ったり再入院のリスクを減らすインセンティブを病院に提供したり、プライマリケア医や専門医、病院のネットワークがメディケア受給者への医 療ケアや費用に共同で責任を持つ、患者に対する責任の視点に立ったケアを行う組織(Accountable Care Organizations)の構築など、すべての案は医療の質を改善し、費用を削減する可能性を持つ。しかし、本当に実現するだろうか?このような改革 をヘルスケアシステムのいたるところへ適用することの実行可能性については試されたことがない。確かに、米連邦議会予算事務局(CBO)には潜在的予算の 節約、もしくはこのような改革の特徴の詳細を見積もるのに十分な証拠がない。 長期的には、こうした改革の構造は検証され、ヘルスケア・システムの 全体を通じて導入されるようになり、ケアの質や効率性を報いる医療提供者へのインセンティブは、ヘルスケア支出の高騰を減少させ始めるかもしれない。しか しジョン・メイナード・ケインズの著名な言葉、「長期的に見れば我々は皆死んでしまう(In the long run, we are all dead)」が示すように、ヘルスケア・システムにおける節減が現実化するかどうかを待ち続ける余裕が我々にあるかどうかは、疑問のままだ。 たと え議会がヘルスケア改革法案をひねり出すことに成功し、例えばメディケイドの拡大を遅らせることで、その費用支出を3、4年は行わずに済むことなどから、 向こう10年の予算的な中立が望めるとしても、10年を超えたその先の予算的中立が難しいのは確実だ。しかし、こうした支出を加算したとしても、CBO は、メディケアやメディケイドがその主要な推進力となっている現在の政府の支出の軌跡は、今後維持不可能であることを明言している。先月発表されたLong-Term Budget Outlookによれば、CBOは、医師へのメディケア支出が今後削減されす、代替的最小課税制度がインフレを指標とするという現実的なシナリオにおいて、米国の赤字は増加すると予測した。
2月に立法化された景気対策法案(The American Recovery and Reinvestment Act of 2009 、ARRA)には、比較効果研究に11億ドルの予算が含まれている。このうち連邦医療研究品質局(AHRQ)には3億ドル、国立衛生研究所(NIH)には 4億ドルが充てられた。残りの4億ドルは、保健福祉省(HHS)長官室に割り振られることになっていた。HHS長官は、この資金をどう割り振るべきだろう か? それが、米国科学アカデミー医学院(IoM)と比較効果研究に向けた連邦調整委員会(以下カウンシル)それぞれが構成した2つの委員会が連邦議会より問わ れた質問であった。カウンシルは、ARRAにより主要連邦ヘルス機関の各代表によって構成されたグループである。昨日、両委員会はそれぞれ勧告を発表し た。IoMレポート要旨はここで見ることが出来る(National Academies Pressのウエブサイトに登録することでPDFのレポート完全版のダウンロード可能)。カウンシルのレポートは、ここで読むことが出来る。6月30日付けNew England Journal of Medicine(NEJM)には、IoMの勧告についての論説記事とカウンシルの勧告についての論説記事が掲載されている(いずれも会員ログインが必要)。