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米国発日本バイオベンチャーの成功の軌跡
スキャンポ・ファーマシューティカルズのケーススタディ

 現在日本のバイオベンチャーを取り巻く環境は非常に厳しく、事実、今までに成功したバイオベンチャーは、非常に少ない。 そうした日本の状況とは対照的に、米国では、バイオベンチャーの起業と成長に向け強い牽引力をもった経済システムが存在し、 革新的な技術に基づいた新規ベンチャーが絶え間なく生み出されている。 バイオメディカル研究者がビジネスで成功するために必要である協力的な環境のことを、本レポートでは「エコシステム」と呼んでいる。
 しかし米国においても、治療薬候補の大半は商品化されることなく臨床開発段階で失敗に終わっており、 またどのバイオテク企業もほぼ例外なく多大な開発費用を支えるための資金づくりに奔走しており、 また毎年損失を出し続けている。こうしたバイオテク企業の実情は、日本のそれと似通っている。 では、米国ではどのようにして、膨大な投資を要し、 かつ事業失敗や行き詰まりもごく日常的に発生する特徴をもつこの産業を支えているのであろうか。
 本レポートでは、スキャンポ・ファーマシューティカルズの詳細なケーススタディという 日本人ベンチャー起業家が米国・世界市場に挑む物語を通して、 日本と米国におけるバイオテク産業を取り巻くエコシステムの状況について豊富な図表をつけて解説した。
 日本のバイオテク業界に欠けているのは、サクセスストーリーである。 (第6章「スキャンポは日本のバイオ・ベンチャーのモデルとなるか? 〜サクセスストーリーが、明日のサクセスストーリーを紡ぐ」 をPDFページでお読みいただけます
 本レポートは、起業への熱い思いを抱く基礎医療の研究者から、 バイオテク産業に関心を寄せる投資家、日本のバイオテク産業の発展と促進を志す政府関係者まで、 広い層の読者に、必ずや有益な情報を提供できるものと思う。

はじめにPDFページでお読みいただけます
序章成功したバイオテク企業は日本に存在するか?
1) 世界レベルの生物医学研究者が活躍する日本
2) 政府の取り組み
3) 民間や投資銀行による融資・投資
4) エコシステム出現までの道のり
第1章米国におけるバイオテク業界のエコシステム
1) 米国バイオテク産業の資金調達方法の概要
2) 米国と日本における競争的研究資金制度の差異
3) NIHの予算倍増時代が終わった今
4) ベンチャー・キャピタル投資
5) 大手製薬企業の役割
6) 新たな資金調達方法を探るバイオテク業界
7) まとめ
第2章スキャンポ設立前の日本時代
1) 1970年代後半〜80 年代
2) 1990年代
3) 2000年代
第3章プロストンの作用機序
1) プロストンの発見
2) イオンチャネルオープナー
3) イオンチャネル
4) レスキュラの作用機序
5) ドコサノイド化合物 vs エンコサノイド化合物
6) アミティーザの作用機序
7) アミティーザの代謝
8) 発明家兼実業家
第4章アメリカ進出
1) 1996年=キサラタン、米国で発売
2) 藤沢薬品工業との技術提携
3) スキャンポに続く試練
4) アールテック・ウエノ(USA)からスキャンポ・グループへ
5) 第三者による株式投資
6) スキャンポの人事・グループの再編成
7) スキャンポAGとのライセンス合意
8) アールテック・ウエノ(日本)との製造合意
9) アミティーザの承認
第5章アミティーザ承認以降
1) 製造部門を持たない製薬会社
2) 大手との提携
3) TPNAが提供する営業チーム
4) スキャンポによる営業活動
5) TPNA提携の金銭面条件
6) スキャンポ当面の目標
7) スキャンポのマネージメント・チーム/IPOを控えたスキャンポ
 スキャンポ従業員 スキャンポ役員の雇用形態
 その他の役員の履歴および雇用形態
 ストックオプションおよびその他の報酬プラン 役員報酬:概要
 取締役 上野・久能両博士への特別株式および現金付与
第6章スキャンポは日本のバイオベンチャーのモデルとなるか?
〜サクセスストーリーが、明日のサクセスストーリーを紡ぐ
PDFページでお読みいただけます

内容詳細:
日本の基礎医学研究は非常に目覚ましい成果を上げており、 その成熟度は世界的にも広く認知されるところである。 しかし昨今、日本の中央、地方政府が総力をあげて取り組んでいるバイオ産業構築の取り組みは、 こうした高い国際的競争力をもつ日本の研究実態とは裏腹に、 これまで芳しい成果を上げておらず、日本にバイオテク企業創設を促す土壌を形成するという構想に対して、 国民はやや冷めた目を向けはじめている。 現在日本のバイオ産業で観察されるのは、これまで起業に成功した数少ないバイオベンチャーがその生き残りをかけ懸命な資金調達に奔走し、 また新規に起業を志す企業家たちが独自の開発技術を商業化する上で必須の 資金と優秀な人材の獲得に悪戦苦闘している姿である。

そうした日本の状況とは対照的に、米国では、革新的な技術に基づいた新規ベンチャーが絶え間なく生み出されている。 米国では、学術的バイオ医学研究分野に対して、国立衛生研究所(NIH)より大規模な連邦政府の助成金が出されているほか、 ベンチャーキャピタル企業や投資家からの積極的なバイオベンチャー産業への投資、 特許をはじめとする私的財産権や企業合併の契約交渉を専門とするコンサルタントや弁護士集団との太いネットワークの形成、 また世界的大手バイオ・製薬企業との間で盛んに繰り広げられる提携や合併などの取引と、 バイオベンチャーの起業と成長に向け強い牽引力をもった経済システムが存在する。

しかし米国においても、治療薬候補の大半は商品化されることなく臨床開発段階で失敗に終わっており、 またどのバイオテク企業もほぼ例外なく多大な開発費用を支えるための資金づくりに奔走しており、また毎年損失を出し続けている。 こうしたバイオテク企業の実情は、日本のそれと似通っている。 では、米国ではどのようにして、膨大な投資を要し、かつ事業失敗や行き詰まりも ごく日常的に発生する特徴をもつこの産業を支えているのであろうか。

本レポートでは、日本人研究者によって創設された米国のバイオベンチャーについての詳細なケーススタディによって、 この日米のバイオテク企業を取り巻くエコシステムの差異を具体的に検証することを試みた。 その会社とは、スキャンポ・ファーマシューティカルズ(Sucampo Pharmaceuticals Inc.)である。 起業家の本人自らが日本で発見した化合物をもとに米国に創設したこのベンチャーは、日本の投資家より資金調達を行い、 日本のトップ製薬会社と共同開発、販売のパートナー関係を結んだ点でも、ある種非常に「日本的」な企業であるが、 その本社は、米国のワシントンDC近郊にある。スキャンポは既にリード化合物に対するFDAからの新薬承認をとりつけ、 その販売を開始、また新規株式公開(IPO)を完了させるなど、バイオテク企業として順調なスタートを見せている。

なぜスキャンポは日本ではなく「米国」に設立されたのか? スキャンポのような企業が、米国で成功していくために直面する障壁とは何か?  日本において、バイオテク産業を取り巻くエコシステムが、これまで上手く構築、発展されなかった理由は一体何か? スキャンポは、日本のバイオ業界にとって有効なモデルケースとなりうるのか?  本レポートでは、これらの疑問全てに対して、焦点をあてその回答を試みた。




2007年12月発行
全106ページ


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